硫化水素中毒事件―”ラプラスの魔女”レビュー

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"東野圭吾"という作家の名前はよく耳にしていたし、その中でも”マスカレード・イブ””恋のゴンドラ” ”容疑者Xの献身”とか知っていた本のタイトルも多かったが私はあまり一般小説は読んでいなかった。十代の生徒ということもあり堅苦しい内容と主人公への感情移入が難しかったためだ。(もちろん周りによんでいる人も少なからずいた)

本書を手にとり、読んだのはこの”ラプラスの魔女”という作品が出版されてから、クラスメイトの評価が高く、そのタイトルに惹かれためである。以下あらすじ

 ある地方の温泉地で硫化水素中毒による死亡事故が発生した。地球化学の研究者・青江が警察の依頼で事故現場に赴くと若い女の姿があった。彼女はひとりの青年の行方を追っているようだった。2か月後、遠く離れた別の温泉地でも同じような中毒事故が起こる。ふたりの被害者に共通点はあるのか。調査のため青江が現地を訪れると、またも例の彼女がそこにいた。困惑する青江の前で、彼女は次々と不思議な“力”を発揮し始める。

さて、この記事を読んでいるあなたはラプラスという言葉を聞いて何を連想するだろうか。聞いたことはあるがよくは知らないという人が多いのではないだろうか?ちなみに私は生粋のガンダムオタク(多分)であるため機動戦士ガンダムUCで物語のカギとなる

ラプラスの箱”なる言葉がすぐに思い浮かんだ。実際その影響で”ラプラス”という単語に惹かれて本書を購入したのは内緒である。

 

1、ラプラスとはいったいなにか

ラプラスとはフランスの学者”ピエール=シモン・ラプラス”という人名のことを指していることが多い。(ポケモンラプラスではない)

彼は”決定論”にて

これから起きるすべての現象は、これまでに起きたことに起因し、ある特定の時間の宇宙のすべての粒子(原子のこと)の運動状態が分かれば、これから起きるすべての現象はあらかじめ計算できる

という考え方を発表した人物である。

これを深く掘り下げるとネタバレ

 

2、作品のプラスポイント(個人的)

この作品の見どころは主人公である研究者、青江が事件に向かう先々で出会う少女が発揮する不思議な力であろう。普通の人間なら絶対にできないことさらりとやってしまう彼女の力には畏怖を覚えたし、物語の真相にも深く関わっている。

また硫化水素中毒による死亡事故というテーマも深く彫り込まれており、化学に詳しくない人でもすらすらと読めた。また、あらすじにもあるように何故いろいろな温泉地で硫化水素中毒事件がおこったのか、それらに関係する共通点は何なのかといったことが詳しく説明されていた。

物語で次々と紐解かれていくこの事件の真相を考察しながら読むことが出来たためミステリーが好きな人も楽しめる内容となっている。

 

3、作品のマイナスポイント(個人的)

文体は読みやすく内容もわかりやすいため、つまらないところは少ないが、物語で張られていく伏線が多かったため、その間が少し疲れてくることがあった。

文量が少し多い作品であるため読書が苦手な人は最後まで読み切る気力が重要だ

事件の内容は面白かったし、最後の盛り上がりも良かったけど終わらせ方に少しだけ違和感があった。(最後は硫化水素を使って欲しかった)

 

4、個人の感想(おまけ)

あらすじの彼女が手に入れた能力は僕からするととても欲しい力だったけど、この物語で彼女が語った最後のセリフを読むとやっぱりない方がいいのかなと思わされた。

 

 

 

ラプラスの魔女 (角川文庫)

ラプラスの魔女 (角川文庫)

  • 作者:東野 圭吾
  • 発売日: 2018/02/24
  • メディア: 文庫